りょうの攻めはさらに激しさを増す。
両の腕をがっちりと掴まれ、そのまま上と促される。
―こいつ!シャツやズボンのボタンだけじゃ飽き足らずにヒートテックまでそのてに掛けて殺めるつもりか!―
だが郷に入っては郷に従えだ。
あえて相手の策略に従って俺は素直に両の手を上げた。
スルスルとシャツは、りょうの手によって俺の腹、胸、腕を伝ってまくし上げられていく。
しかし顔を覆うほどにたくし上げられた時にそれは起こった。
停止。
これでほぼ視界を奪われる事になる。
やはり罠だったのか?茶番なのか?
『見えないのって興奮するでしょ?』
りょうはそう言うとくるりと俺の背中側に回る。
そしてあろうことか自らの、恐らくは感触からして舌で、汗ばんだ俺の背中を愛撫し始めたのだ。
ヒートテックが引っかかってしまい腕もあまり動かせない。
―チッ!ここで視界に加え、両手の自由まで奪われるとは。俺もとうとうヤキが回ったか?―
なおもりょうの猛攻は続く。
『くすぐったい?』
そう言いながらもりょうは腰あたりから首筋まで丹念に俺の背中を舐め上げていく。
『いや、あっ、あっ、気持ちいいです。』
精一杯の声を上げる俺。
しかしりょうの攻めが止むことは決してない。
彼女の攻めが雨ならば、世界中の干ばつでの飢饉問題は全て解決されるだろう。
りょうはまた態勢を変えて今度は正面側へ。
阿形と吽形の様相を帯びた、くすんだ乳首の方へと頭を移動していく。
顔から首、体へとりょうの吐息を感じる事で徐々に降りていくので分かった。
『乳首も気持ちいい?』
ここまでくれば…えーいままよ。
経験が告げる。
俺は流れに身を任せる。
『ハイ。』
良い返事だ。
ピッカピカの一年生にも決して負けてはいないつもりだ。
りょうは左手で俺のヒートテックを使い自由を奪いつつ、俺の乳首を舐め続ける。
チロチロ。
チロチロ。
まるでそんな音が聞こえそうなほどに。
レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ。
と、漫画や文章ならこう描くべきであろう高速の舌遣いを織り交ぜてくるりょう。
何分かその攻めは続いたのだろうか?
あっと言う間でもあり、永遠でもある時間。
見えている俺の上半身は全てりょうの唾液の大海に変わっている気がした。
りょうはようやく脱がせかけたヒートテックを俺の体から切り離した。
―しばしのお別れだ、ヒートテック。なぁに、またきっとどこかで会えるさ―
俺が別れの余韻に浸っている間にりょうはいつの間にか黒のハイネックニットを脱いでいた。
格闘技ならバックを取られたら終わりだ。
それはこのウインナースポーツとて同じ事が言える。
今の彼女なら俺の陣地に侵入することは容易いだろう。
すでに正門は開いているし、残りはチャックのみだ。
余談だが、チャックと言って軽口を叩くタイプの外国人の名前ではない。
ボタンをナイトに例えたからと言ってチャックはチャックでありジッパーの事だ。
もちろんジッパーもアメリカンタイプの大型バイクにでも乗りそうな外国人の事ではない。
ズボンやジャンパーについているの事だ。
昭和で言うところの社会の窓。
これで分かるか?
話を戻そう。
チャックをいよいよと、りょうがゆっくりと下げる。
―くっ、このままでは―
思わず立ち上がった瞬間にズボンは無残にも床へとずり落ちた。
いよいよ俺はパンツ一丁。
だが大事なものは必ず守る。
そう、仲間の死で涙に濡れたKalvin Kleinだけが俺を守ってくれていた。
性戦 第32話 ~両雄~
ベッドから立ち上がった俺にはさらに過酷な運命が待ち構えていた。
自問。
それほどの責を俺は追うのか?
自答。
否、そんなはずはない。
都合の良い自分への言い訳だった。
りょうの責めは相変わらず休まる事は決してなかった。
淡い期待すら持てぬ状況にある意味俺は酔いしれていたのかもしれない。
憑りつかれたように激しく、故郷の母のように時に優しく。
舌を使い、手を使い、そして恐らくは腰をくねらせ全身を使い。
俺に背後から語りかける。
『自分でパンツを脱いで。ゆっくり下ろしてね。』
俺に何もかもを捨て去れとこの女は言う。
夜。
孤独。
それだけで俺は何もかもを失ったと思っていた。
経験が告げて教えてくれたはずだ。
しかしりょうは違った。
彼女だけは違ったのかも知れない。
俺自身も知りえない、隠された感情を見つけ出しては彼女は捨て去れと言う。
すでに俺は、依頼を受けてしまった事に後悔を感じ始めている。
つくづく自分の性格が嫌になる。
人に借りを作らず、常に優位に。回収する側へ。
だが実際はどうだろうか?俺には分からない。
考えるのを諦める。
俺は自分の下着に手を掛けた。
その瞬間、ふと俺が振り返ったその時。
りょうはおもむろに自分の背へと手を回すと、上半身唯一の守り。
俺の前に立ち塞がった連なる活火山を、溶岩を自らの手で取り去った。
そこには想像とは違う二峰の雪山が姿を現す。
露になる乳房。
たゆん、たゆ~~~ん。
十八禁の卑猥な漫画であればこう表現される擬音。
ルージュのように赤い乳頭。
立っている。
彼女もりょうも俺と同じだった。
真っ白でまるで淡雪、赤ん坊などには独占はさせられないほどにしゃぶりつきたくなる。
そして形の良い、大きな。
大きな胸。これが胸。これぞ胸。
これこそが女の胸。
夢の女を思い起こされる。
―ここでも俺は遅れを取るのか?―
俺は手にかけたKalvin Kleinを素早くずり下ろした。
足を使い、完全な俺へと。
りょうはそっと俺の前へ回り俺を抱きしめる
それはIKEAのバスタオルより遥に温かい癒しを与えてくれた。
俺のミスタービーンと自分のミスビーンをお見合いさせる。
掴まれた二の腕から、りょうの手の温度が伝わる。
さようならの様にりょうは後ろを向く。
そしてスカートのチャックを下ろしてそのままスカートを床に落とす。
ストンッ
そんな音など一切していないが一般的にはこのような擬音で解釈されるであろうイメージ。
実際の音はふぁふさぁ~くらいのものだ。
話に戻ろう。
そして尻を、尻を、尻を!
AでもないZでもない。
無論エッチではあるのだがHではない。
俺は確かに見た。
見間違える筈がない。
彼女はアルファベット部隊二十五番目の刺客。
そう…。
T!
T!
Tだ!
Tバックを着用していたのだ。
ブラジャーとお揃いの赤の極小布面積しかないTバック。
尻ホッペが完全に露出されていた。
無防備な尻ホッペを俺の、俺の、事もあろうか俺の生用心棒に押し付ける。
生、生だぞ。一般的に生絞りなど生は良いとされている生だ。
冷やりと、少しだけ冷たい感触が股間に伝わる。
しっとりと濡れているかのように錯覚する。
いや、濡れているのは生用心棒の汗のせいだった。
今更だが、経験がそう告げていた。
To Be Continued・・・