
あの頃の私にもう一度会いたい。
未来を語りながら、何も怖くなかった日々。
どんな夢も叶うと信じていた、あの無邪気な時間。
雑音のように重なっていた失敗も、
今ならきっと、優しい音に聴こえる。
涙も悔しさも、全部が音の波となって
今の私を奏でてくれている気がする。
あの時の笑い声、
夕暮れに染まる街、
誰かと手を繋いだ温もり。
全部、心の奥にしまったまま再生ボタンを押せずにいる。
だけど──
巻き戻すことができないからこそ、
この瞬間を大切にできるのかもしれない。
何度でも録り直せるわけじゃないから、
ノイズ混じりの今を、愛しく思う。
そして私は今日も、
少し擦り切れたテープを回しながら、
「これでいい」と笑うのだ。