
夏の全国高校野球、大会12日目の第1試合は沖縄尚学高校が宮城の仙台育英高校に延長11回タイブレークの末、5対3で勝ってベスト8に進みました。
2人の左腕 投げ抜いた好試合
ベスト8進出をかけた沖縄尚学と仙台育英の1戦は、両チームが継投も見据えた中、2人の左腕が延長11回を1人で投げ抜いた好ゲームとなりました。
この試合、沖縄尚学はここまで無失点の2年生の末吉良丞投手、仙台育英はわずか1失点の吉川陽大投手とともにエースナンバーを背負う左腕どうしの先発となりました。
両チームは複数の好投手を擁していて、試合前、沖縄尚学の比嘉公也監督が「相手が合っていると思ったら積極的にスイッチしたい」と話せば、仙台育英の須江航監督も今大会「雨が降る前に傘を差す」と独特の表現をしながらピッチャーの状況次第で早めの継投に入る考えを示し「吉川の中で雨が降るというふうに思った時にはスパッといく」と、ともに継投を考えながらの試合運びになることも予想されました。
しかし、試合が始まると、その中心にいたのは2人の先発投手でした。
末吉投手は1回と5回に得点を許したものの6回以降は得点を許さず、吉川投手も要所での勝ち越しは許しませんでした。
2人が100球を超えるピッチングの中、試合は延長タイブレークにまでもつれ込みました。
延長11回に須江監督がカギになると話していた仙台育英側の守備にほころびが出て勝ち越しを許し、最後は、涙を目にためながら打席に立った吉川投手がセカンドゴロに倒れ、末吉投手が投げ抜いた沖縄尚学がベスト8進出を決めました。
投じた球数は吉川投手は151球、末吉投手が169球にも及んだほか、2人ともふた桁に乗る三振を奪って気迫を見せた試合に整列の際には観客からは大きな拍手が送られていました。
大粒の涙を流しながら取材に応じた吉川投手は「末吉くんが粘り強いピッチングをしていたので、自分も粘り強いピッチングをしようと思っていたが、延長11回に甘さが出て打たれてしまった。本当にくやしい」と末吉投手との投げ合いに刺激を受けながらのマウンドだったと話しました。
一方の末吉投手は「先にマウンドを降りたくないという思いがあった。いい投手と投げ合いができ、楽しかった」と話し、相手のチームの思いも背負い、次の試合に臨む覚悟を示しました。
試合前に継投を考えながらと話していた須江監督は「まったく曇り空にもならなかった。見ていたお客さんもそうだと思うが、マウンドは吉川くんと相手投手の末吉くんの空間になっていたので、そこには立ち入ることができないと思った。点数では形容できないようなナイスピッチングだった」とたたえました。
2人の好投手が見せた意地と意地のぶつかり合い。
両チームだけでなく、多くの高校野球ファンにも強い印象を残したであろう熱い戦いとなりました。