
朝、旦那を玄関で見送ったあと。
洗いかけの食器が水に浸ったままのシンクを横目に、私は鏡の前に立った。
「今日は、どんな顔で行こうか――」
平日の午前10時。
この時間だけは、家事も育児も、妻という肩書きも、全部置いていける。
「奥様クラブ」で過ごす数時間は、私にとって“もう一人の私”になる時間。
名前も違う。服も違う。口調も、笑い方も、少し違う。
でも、どれもぜんぶ本当の私。
女として、見られること。求められること。
日常の中で埋もれていた“女”を、そっと掘り起こしてくれる場所。
昨日より少しだけ、綺麗に見えるように。
今日だけの物語を、また演じに行く。