
旦那が仕事に出たあとの、もう一つの顔。
火照った肌に、午後の風。
午前10時。
洗濯機が静かに回る音と、ベランダに吹き込む風が心地よい。
キッチンに立つ私の頬には、まだ朝の名残が残っている。
「じゃ、行ってくる」
そう言って出かけた夫の背中を見送ったのは、ほんの一時間前のこと。
でも、私の中ではもう、まったく別の時間が流れ始めている。
スマホの通知音が鳴った。
名前を見るだけで、息がふっと熱くなる。
――今日、逢える?
誰かにバレたら、どうなるんだろう。
そんなスリルすら、今の私にはご褒美に思える。
日常の“仮面”を外したときだけ、私の本当の欲が顔を出す。
乾きかけた肌に、午後の風が優しく触れる。
私は、またひとつ、“奥様”を脱いでいく。