大学を卒業してから10年ほどはクリニックで勤務していたのですが、整形外科専門のクリニックだったのもあって色々なケガで来院してくる人も多かったです。その中で結構エグい骨折で来るのは警察の人で逮捕術の大会で負傷したという人達でした。逮捕術ってまあ剣道の防具をつけて何でもありみたいな格闘技なのですがその時はっきり確信したことがあります。それは剣道、あまり逮捕術の強さに関係ないということです。私は小学校から高校まで剣道をしていて、剣道が強くて警察官になったという人も周囲にいます。ただ、前から思っていました。何の役に立つんだろうか、と(笑)。警察官は剣道と柔道、必修です。柔道は分かります。犯人を制圧するのは柔道が非常に役に立つでしょう。しかし、剣道はどうでしょう。警察官って武士じゃないですから、日本刀で犯人と対峙するわけではありません。大体、逃げてる犯人にすり足で向かってくる警察官、いるはずないです(笑)。間合いのとり方が・・・なんて思う人もいるかもしれませんが警棒と竹刀、長さが全く違います。さらに剣道の打撃って止めるのです。打ち下ろすわけではありません。打ち下ろしたら外れた時にバランスを崩して相手に攻撃されてしまいます。ですから必ず標的で止めます。切りつけるのではなく当てるという感じです。だから攻撃力は弱いです。だから、逮捕術で強いのは剣道だけ強い人ではないです。もちろん剣道も強い、という人はいますが剣道だけ強くても逮捕術が強いわけではありません。
しかし、未だに剣道は柔道と並んで必修なんです。柔道は明らかに実践で必要だからです。採用にあたって柔術と争ったこともあったみたいですが、柔道の方が柔術よりも使える、と判断して採用されています。では剣道はなんでだろう、と考えた時に実践で使えるとか使えないとかを超えたものがあるのだと思います。剣道の技が逮捕時に使えるから必修なのではなく、剣道の鍛錬を通じて養われる精神性が警察官にとって必須だから剣道が必修になっているのでしょう。このように一見、役立つとは思えないのに大事にされているものというのは大事にされているだけのことがあります。伝統を重んじることの重要性に通じます。伝統というのはなにがいいのか分かっても分からなくてもずっと大事にされていたものだから大事にするものです。それを価値がない、なんて切り捨てたら伝統はなくなってしまうでしょう。



