
セキグチ「ここが、“心を砕く風”が吹く場所だ。」
トラカワ「なんだよそのネーミング……」
セキグチ「この場での修行は、まず“精神の裂断”から始まる。立て、目を閉じろ。そして、剣に語りかけろ。」
トラカワは渋々目を閉じ、バイブレードを握りしめる。
トラカワ「語りかける……?」
セキグチ「そうだ。“バイブレード”は、ただの剣ではない。意志がある。対話しなければ、真の力は開かれぬ。」
トラカワ(……剣に、語りかける……?)
内心では半信半疑だった。が、目を閉じて呼吸を整えたその瞬間——
——ドクン。
バイブレードが、脈を打った。
トラカワ「……!?」
頭の中に、何かが流れ込んでくる。剣が、語りかけてくる。
『我が名は、未だ定まらぬ。だが、汝の手にて真名を得よう——』
トラカワ「(なんだ……この感覚……)」
風が唸り、意識が吸い込まれていく。
セキグチ「……感じたか?」
トラカワ「あ、ああ……なんか、声が……」
セキグチ「それでいい。“バイブレード”は、持ち主に応じて形も力も変わる。お前が選ばれたなら、それを制する力を得ねばならん。」
そして——
セキグチ「まずは、“風斬りの型”を教えよう。だが覚悟しろ。これは、私の弟子三人を精神崩壊に追い込んだ技だ。」
トラカワ「お、おい待て、それ洒落にならn——」
ドガッ!!
セキグチの蹴りが直撃。崖下へ吹っ飛ぶトラカワ。
セキグチ「修行は問答無用だ。」
その頃——
霧に包まれた王城の玉座の間。
血の海に沈んだはずのカンタ王の亡骸に、影が近づく。
「……終わったか、王。」
仮のIくんが、静かに血の中のカンタ王を見下ろしていた。
「もはや、この王国は——」
その時。
ピクリ。
「……?」
カンタ王の指が、わずかに動いた。
「…………!」
次の瞬間——
ガバァッ!!!
血まみれのまま、カンタ王が起き上がる!
カンタ王「……ふぅ……予想より、少し痛かったな。」
Iくん(仮)「な……ッ!? 死んだはず……!」
カンタ王「言っただろう、“この二人のIの存在が示している”と……」
カンタ王の眼が、怪しく光る。
「貴様の“個性”、すなわち“分身・高速移動・幻像”……すべて、今は——」
ズブリッ!!!
カンタ王の手に、いつの間にか握られていた刃が、Iくん(仮)の腹を貫いた。
Iくん(仮)「が……は……っ……」
カンタ王「“模写の王”と呼ばれた所以、思い出してもらおうか。“相手の技術を、殺される前に写す”——それが私の、真の力だ。」
Iくん(仮)の顔から色が失せていく。
Iくん(仮)「まさか……そんな……力……が……」
カンタ王「……お前たちのような“存在”に、王座は渡さん。」
ドサッ——。
Iくん(仮)の体が崩れ落ちた。血が染み込み、王座の赤絨毯と一体になる。
カンタ王はその前に立ち尽くし、そして静かに、王冠をかぶり直した。
カンタ王「さて、次は“本物”のIくんに会いに行くか……」