
『薬屋のひとりごと × トラカワ』
―薬屋の中庭に現れた異物―
とある昼下がり。後宮の薬室。
壬氏は帳簿を片手に眉をひそめていた。
「…どうにも、薬草の減りが妙に早いな。まさか猫猫(マオマオ)がまた勝手に──」
その時、ドサァッと物音がした。
帳簿を閉じ、庭先へと視線をやると、どこかから転がり落ちたような汚れた荷物袋。そしてその横で、あられもない格好の中年男が寝転がっていた。
「……ぬ゛ぅっ……あっつぅ……おら、完全に迷子になっとる……ここどこら?王宮……?」
もじゃっとした濃い髭、くせ毛に黒縁メガネ。
泥だらけの半袖短パン、肩からぶら下がる名札には「トラカワ(沼津人妻花壇)デリヘルスタッフ」と書かれていた。
壬氏は思わずため息をつく。
「……また妙な奴が迷い込んだな」
そこに猫猫が現れる。
「何ですかこの人……怪しいですね」
トラカワがふらふらと立ち上がり、猫猫に気づくとニヤリ。
「おっ、嬢ちゃん。おらこう見えて“お客様の体調管理”にゃうるさいタイプなんさ。漢方とかよう使っとったで!」
「そういうのを“デタラメな自己申告”って言うんですよ。ていうか、なんでここに?」
「いや〜聞いてくれや。沼津の風俗戦争に巻き込まれて、逃げる途中で爆睡しとったら……気づいたらここ!」
「は?」
壬氏が冷たく言い放つ。
「身分証明もなく、後宮に侵入した罪は重いぞ?」
「ま、待ってくれー! おら、ほんとたまたまなんだって!つーかこの辺、パチンコ屋はねぇのか?」
猫猫がじっと彼を観察する。
「……でも妙ですね。見た目は汚いのに、手の爪は短くて、耳もきれい。人に接する仕事をしてた形跡がある。肌は日焼けしてないし、屋内勤務が多い。……」
「そ、そうそう!接客業だもんでな!」
「ただし、まともな店ではなさそうですね」
「……ぐぅ……バレたか……!」
壬氏が呆れながら言う。
「猫猫、こいつの処遇は任せるよ」
「じゃ、毒味係として暫定雇用ってことで」
「えぇ!?おら、薬とか飲むの苦手なんだけど!!」
「飲むんじゃなくて、“試す”んですよ。失敗したら……死にますけど」
「お、おっそろしいお嬢ちゃんだで……」
かくして、
トラカワは王宮に一時的な“毒見兼小間使い”として雇われることになった。
彼が後宮に何かの役に立ったのかどうかは──
誰も知らない。
──しかし数日後、なぜか王宮の一部に「沼津人妻花壇 出張版」と書かれた怪しい看板が立っていたという。
───
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