今日はちょいと真面目な話をしよう。
いや、真面目というか
避けて通れない話だ。
一度辞めたお嬢さんが、
しれっと復活の呪文を唱えて舞い戻って来る。
あるいは、
しばらく音信不通だったお嬢さんが、
何事もなかったように電撃出勤を決める。
まぁこの業界、
そんな話は珍しくもなんともない。
で、その時によくあるのが
「名前、変えたいです…」
この申し出。
もちろん変える。
変えるんだが、
だいたい察しがつく。
「なんで?」
と聞くと、まぁ辻褄の合わない話が出てくる。
話がフワッとしてる。
時系列が怪しい。
言ってる本人も苦しいのが伝わってくる。
私はそこで必要以上に詰めたりはしない。
だが心の中ではこう思っている。
ああ、店外でなんかあったな。
いいか、お嬢さん方。
当店はお客様との個人的なやり取り、
連絡先交換を禁止している。
なぜか。
後でほぼ確実にトラブルになるからだ。
これは大げさでもなんでもない。
絶対とまでは言わんが、
かなりの高確率で揉める。
店に出ている時のルールの中ですら
人間は面倒くさいのに、
そこから外に出て
、個人と個人でやり取りなんぞ始めたら、
そりゃもう事故の予感しかしない。
にもかかわらずだ。
やっぱりいる。
「店外どう?」
「今度ご飯でも」
「連絡先だけでも」
そんなことを言ってくるお客様。
しっかりしたお嬢さんは
きっちりNGを出す。
そこは偉い。非常に偉い。
拍手だ。座布団一枚だ。
だが現実問題、
目の前の金にクラッときてしまうお嬢さんもいる。
「今回だけなら」
「少しくらいなら」
「この人なら大丈夫そう」
この「そう」が一番危ない。
大丈夫そう、
で大丈夫だった試しがないのがこの手の話。
はっきり言おう。
そんな関係は長続きしない。
綺麗に終わることはない。
むしろ、いい人そうだった人が完全な悪となる。
私はそんなお嬢さんを甘やかしはしない。
ルールを破って、自分で火種を抱え込んだなら、
当然それ相応の痛みは負ってもらう。
ワシを鬼にしたのはアンタでっせ。
となればもう、萬田銀次郎の出番だ。
情けをかけても学ばない奴には、
現実をきっちり見てもらうしかない。
高級店ってのは、
上品なだけじゃ回らない。
ルールを守れない人間を
バシバシ切れる冷たさがあって
初めて高級店。
ぬるい顔して全部受け入れてたら、
店の品も、女の子の安全も、一瞬で崩れる。
それともう一つ。
こっちの方がもっと大事。
この仕事をしているお嬢さんのプライベートには、
触れてはならない。
これは暗黙のルール。
いや、暗黙というより常識だ。
店としても、私としても、
お嬢さん達の私生活を
根掘り葉掘り知りたいなんて
思っちゃいない。
どこに住んでいようが、
何をしていようが、
誰といようが、
そこはその子の人生だ。
こっちから踏み込むことじゃない。
お嬢さんの方から話してくるなら聞く。
相談なら乗る。
困ってるなら助ける。
だが、こちらから土足で入る気はない。
街で見かけた?
だから何だ。
声なんかかけない。
見なかったことにする。
それが礼儀。
これはお客様にもお願いしたい。
出勤している時のお嬢さんは、
あくまで店の中のその子だ。
名前も違う。立場も違う。空気も違う。
要するに、
プライベートの本人とは別人物と思っていただきたい。
店の外で見かけたからって、
気安く話しかけない。
あとをつけない。
探らない。
詮索しない。
ただの迷惑行為だ。
ただ、そこまで行ってしまったなら話は別。
こちらも然るべきところに委ねるしかない。
店のルールとかマナーとか、
そんな優しい話じゃ済まなくなる。
なんで今日こんな話をしてるのか。
答えは簡単。
これは予防。
まだ大事になる前に釘を刺しておきたい。
こっちが「ちょっと危ないな」と感じた時点で、
最近は私自身が顔確認に出向いている。
面倒だとか、過保護だとか、そういう話じゃない。
何かあってからじゃ遅い。
店は、ただ稼がせりゃいい場所じゃない。
安全に働ける線を守ってこそ店だ。
ルールってのは女の子を縛るためにあるんじゃない。
女の子を守るためにある。
その線を越える奴がいるなら
こっちも遠慮はしない。
甘い顔で見逃して、
後で泣くのはいつもお嬢さん。
悪いが、そういう店じゃない。
ちゃんと守る。
ちゃんと切る。
そして、危ない橋を渡ろうとするなら止める。
それが店の役目、私の役目だと思っている。



