もし私の名が「勇次」だったら
「あの時の空を忘れちゃいなか?」と
言われりゃ、思い出しただろう。
なんなら無理やりでも思い出す。
青でも灰色でもいい、
とにかくそれっぽい空をでっちあげる。
「エネルギッシュがお前が欲しい」
って言われたら、
エネルギッシュどころか
ギルガメッシュくらいまで無理して仕上げるだろう。
でも現実はどうだ。
俺は勇次じゃない。
空も思い出せない。
エネルギッシュでもギルガメッシュでもありゃしない。
長渕剛が叫んだところで
出てくる言葉は
「戻りたい泣」「帰りたい泣」
最近、よく静岡駅のパルシェに行く。
目的は崎陽軒のしゅうまい弁当。
あの完成された世界。
あの「これでいいんだよ」感。
冷めれば冷めるほどうまい弁当。
あれを手に入れるために
疲れた体を引きずって駅へ向かう。
だが現実は甘くない。
今日も夕方過ぎ、売り切れ。
はい終了。
もうね、ここで1回の敗北を覚える泣
仕方なく、代替弁当を探す。
人はこうして妥協を覚える。
パルシェ内を彷徨う。
異様な存在を耳にする。
崎陽軒の斜め後ろ。
とんでもなくエネルギッシュな叔母さま。
もうね、弁当売ってるというより
気迫を売っている。
「いらっしゃい!どう?どう?どう?」の一声に
足を止める。
「安くするよ!おいしーよ!買いなさいよ!どう?どう?どう?」
とにかく圧がすごい。
叔母さまと目が合うと確実に捕獲される。
「はい!これとこれ!餃子もつけちゃうから!」
最終的に買わされる。
長渕が求めてた“エネルギッシュ”って
多分これ。
このばばぁの旦那の名前は「勇次」であろう。
結局しゅうまい弁当の代わりに
また今日もばばぁの中華弁当を買った。
これで3日連続泣
あの時の空は忘れちゃいないか?
空は思い出せなくても、これだけは思い出すだろう。
「ここの弁当はとにかくマズい泣」



